2012年10月31日

縁(えにし)

このブログもついにお開きとのこと。

さて最後ということで、ここ数年に現場で出会えた生き物(特に中々出会えない種)を掲載して最後にしましょう。
ただ、鳥など一部はあまり良い出会いがなかったのでごめんなさい。。
いつかまた出会える日を楽しみに。

年々忙しくなる中、これらの生き物との出会いは、一時でも仕事の疲れを癒してくれます。
環境や生態などを考えながら、物思いに更けて。

【昆虫類】
縁(えにし)ヒメタイコウチ(カメムシ目タイコウチ科) Nepa hoffmanni
湿地や湿原、水田、池畔などの水際に生えた植物の根際や落葉の下に生息する水生昆虫です。
ただ、飛ぶことができないほか、水生昆虫のくせに、水深が深いと溺れて死んでしまいます。
あまりにも生息環境が限定的で減少の一途(天然記念物に指定される地域もあります)。

また、体長も2cm程度と小さく、よく探さないと気付かないかもしれません。
場所によって探し方を変えないと見つからなかったり、1回では見つからないときもあり、まだまだ彼らの気持ちは計りかねます。


縁(えにし)タガメ(カメムシ目コオイムシ科) Lethocerus deyrolli
先のヒメタイコウチとは一転、6cmと大型の水生昆虫で、魚やカエル等も捕食します。
場所によっては、今でも街灯に沢山飛んで来るのが見られますが、近くでは見なくなりました。

夜な夜な川を潜っていたら、護岸に張り付いているのを発見しました。
当時は朝から深夜までとヘロヘロでしたが、出会いに疲れを忘れさせられました。


縁(えにし)クロカナブン Rhomborrhina polita
珍しい種ではありませんが、私は縁がないのか、出会えなかったり、目視止まり(捕獲できず)であることが多い。。。。

今回は、カーナビに騙されて走らされた山道を走行中、樹液に集まっているのを発見!
遠回りさせられた山道ですが、これも縁ですね。

名前のとおり、黒色のカナブンですが、黒光り感がたまりません。


縁(えにし)マクガタテントウ Coccinula crotchi
結構珍しい種で、河川で見られることが多いものの、生態や生息環境は不明瞭とされています。

見つけた場所は河川以外ですが、オープンな荒れ地(草地)。
そういう環境が好きなんでしょうね。

個人的にもほとんど見たことありませんでしたので、感激もひとしおです。

【両生類・爬虫類】
縁(えにし)オオサンショウウオ(卵塊)Andrias japonicus
いわずもかなオオサンショウウオ!

最近は外来のチュウゴクオオサンショウウオが分布を拡大、交雑も見られるなど純血の生息が危ぶまれています。

卵塊を確認したものですが、親が見当たらなかったことから育つことは無いでしょう。
折角見つけたのに寂しい感じでした。

縁(えにし)シロマダラ Dinodon orientale
夜行性なので、昼間は滅多に見かけません。
夜間調査の多かった昨年は良く見かけました。
夜も徘徊しないと出会えない生き物は多いです。

写真は穴掘りしていたところで見つけたものですが、幼蛇ですごく可愛かった!
飼育してみたいところですが、餌にこだわりがあるようで難しいです。
というより、野生の生き物なのでそっとしておいてあげましょう。
大きくなってまた出会えるといいなぁ。。。

【哺乳類】
縁(えにし)カワネズミ Chimarrogale platycephala
こちらは川でイワナを探していた際、川辺を走るのを見つけて捕獲!
通常、動物の捕獲には許可が必要ですが、何せ手掴みで、その辺りは許して頂きたいところ。

生息するのかも分からない場所が多く、疑心暗鬼で調査することも多い。
生態の一端が見られたようで、感激でした。
先日某テレビ局で撮影・放送されていましたが、じっくりと一つの種を観察してみたいものです。

【魚 類】
縁(えにし)ビワマス(降下稚魚) Oncorhynchus masou rhodurus
滋賀県に居ながら、滋賀県下での調査は少ない・・・・

降下稚魚に自然下でお目にかかったのはお初で、感激でした!

後は、意外な河川でも遡上が行われているのだと知り、勉強不足を痛感させられました。

でも、魚は美味しそう!って本能が先立つかな(笑)。

【甲殻類】
縁(えにし)サワガニ Geothelphusa dehaani
種自体は珍しいものではありませんが、一般には赤色で知られることが多いものの、一部では青色の個体が見られます。昔流行ったチョコエッグにも入っていた。

私自身もあまり見かけません。
今回は青色が生息することが知られる高知で発見。
1個体の変異では!?と思った矢先に次々と青色が・・・見慣れぬ光景にオオッ!と感激。


【植 物】
縁(えにし)クマガイソウ Cypripedium japonicum
仕事を始めて20年程立ちますが、現場で出会ったのは数えるほど。
始めての出会いは仕事を始めたばかりの頃、京都府下でしたが、そのころ同府下では絶滅とされており、扱いに困ったものです。

まあ、生き物の分布なんかは、断片的にしか知られていないものも多く、しかたがないことではあります。最近は調査が盛んで分かって来たことも多いですが、それでもまだ。
ちょうど花期に出会え、かつ大規模に群生していたため、気分爽快でした。

ちなみに、本種は増殖技術が確立されておらず、盗掘されるケースが多いとか。
また、地下茎は節間が長く、全長が1m以上になることもあります。
このため、普通の植木鉢には収まらず、かつ、先端の生長点が鉢の内壁などに当たると枯死するため、鉢植えに適さないとされています。

私も育ててみたい種ではありますが、見かけてもそっとしておいてあげましょう。

縁(えにし)クモノスシダ(チャセンシダ科チャセンシダ属) Asplenium ruprechtii 
四方に細い葉を伸ばす姿が名前の由来ですが、英名ではSiberian walking fern(シベリアの歩くシダ)と呼ばれ、これを聞くとさもありなんといった感じ。
今回は壁一面に大小様々が多数見られ、愛くるしさこの上ない!でした。

ちなみに、石灰岩地帯では特有の生物相が形成されたりします。植物もそうですが、今回訪れた地では、面白いお話を聞くことができました。
言われて見るとですが、石灰岩地帯は表土が乏しく植生の発達や耕作には厳しい環境です。

こうした中、地表付近に根を発達させるスギ等(土が少ないと崩壊しやすい)を避け、直根(真下に伸びる根)を発達させ(土砂崩れの抑制に貢献)、かつ落葉(腐葉土等として土壌材料となる)のコナラ類の植栽に力を入れたのだとか。
スギ・ヒノキ等で一面を覆われた山を見ることが多い中、これらの地域ではコナラ類が大半でした。


縁(えにし)ホンゴウソウ Andruris japonica
暗い林床下の堆積した落葉間に生える小さな小さな(高さ3~5cm程度の)腐生植物です。
地上を凝視して歩かないと気付けないかもしれません。

呼びかけられたように立ち止まった足下を見ると、比較的多くが微笑んでいました!
気付きにくいためか珍しいとされていますが、昨今では増えてきたとの情報もあります。

森林利用・管理(落ち葉かきや下草刈り)が減り、落ち葉の堆積が増えたためでしょうか。。。

では、本ブログを含め、これらの生き物に再び出会えることを楽しみに、仕事に勤しむことにしましょうか。


                                                元祖環境調査員

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Posted by 西日本技術の環境調査員 at 07:28 │Comments( 0 ) 自然観察
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