水道水から医薬品成分

西日本技術の環境調査員

2008年04月02日 07:27



<関西の水道>
昨年の暮れ、水道から医薬品成分が検出というニュースが飛び込んできました。厚生労働省の公式見解は「飲用水への混入はごく微量で、人の健康に直ちに影響はない」としています。関西の阪神水道企業団、大阪市水道、大阪府水道、京都府水道などは医薬品の除去に有効なオゾン処理を行っているので、飲料水としては安心できるのではないでしょうか。京都市水道の蹴上浄水場系は平成26年度、新山科浄水場系は30年度からオゾン処理された水道水が供給されます。原水が比較的きれいな滋賀の浄水場でオゾン処理を行っていないと記憶しています。

<環境省と厚生労働省の研究班調査>
環境省は利根川と淀川の下水道処理場や支流から、胃腸薬、抗精神病薬など54種類、医薬品63種類を検出し、最高濃度は2000ppt(1ppt:1兆分の1)です。
厚生労働省の調査では、抗高脂血症剤、解熱鎮静剤、抗てんかん剤の3種類の医薬品成分が検出され、残留濃度は6~30pptと報告されています

<なぜ 大都市圏の水道から医薬品成分が検出されるのか>
人間が医薬品を摂取した場合、吸収されなかった成分は体外に排出されます。それは下水道パイプを通じて処理場へ流れ処理されます。しかし、下水処理においても、すべてが除去されるのではなく、琵琶湖等の公共水域へ放流されます。そして、自然界に蓄積するか下流へ流れ出します。このため、下水道の放流水を含む河川水を水源とする大都市圏の水道の原水から医薬品の成分が検出されるのです。

<どう評価するか>
「飲用水への混入はごく微量で、人の健康に直ちに影響はない」というのが多数の水質専門家の意見です。しかし、EU(欧州連合)が環境への影響評価を義務付ける10pptを超える数値が多数検出されている現実から、必ず付け加える言葉があります。それは「医薬品成分による環境汚染で、生物の生長・増殖が阻害される危険性がある。また、微生物が薬剤への抵抗力を獲得する可能性も否定できない」
はっきりしていることは、ホルモン系の成分なら数pptでも魚がメス化しますし、琵琶湖などの湖沼の底には泥とともに医薬品成分が蓄積されるということです。

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