2011年03月15日
琵琶湖の難分解性物質COD
琵琶湖は275億㌧もの水を貯え、近畿の住民1,400万人の命を支えています。
その湖水の源は雨です。琵琶湖面には年間11億㌧(「琵琶湖ハンドブック」等よりの引用値です。他の数値も同様です。)、その集水域には60億㌧の雨が降り、琵琶湖からは瀬田川経由で43億㌧、琵琶湖疏水や宇治発電用水として13億㌧の合計56億㌧の水が流出します。また、降った雨の4分の一は蒸発します。
この流出水量で湖水量の275億㌧を割った数値が5年となり滞留時間とされます。この場合の滞留時間は湖北に降った雨が他の湖水と混合されずに、そのまま押し出し流され、琵琶湖から順序よく流れると想定した場合の時間です。実際は複雑な混合等によって長時間滞留する箇所もあり、ある計算では滞留時間が20年にもなる場合があるそうです。
さて、近年、CODで表示される難分解性物質(有機物質を化学的に酸化分解するのに要する酸素必要量で、水質汚濁の指標の一つです。)が湖水で増加する現象が見られており、多くの研究者がこの増加の原因究明に注力されています。
琵琶湖には降雨が流入するとともに、生活排水や工場排水等が県の公害防止条例等で規制されている基準値以下の水質にまで浄化され、河川や下水道等を経由して琵琶湖に流入します。この他に、田や畑からの農業系、道路面からの市街地系や、山林からの自然系の各排水が琵琶湖に流入します。
これらの流入水には難分解性物質CODが含まれており、その量は年間では1万7千㌧にもなります(平成12年度実績値)。
少し乱暴ですが、試算します。
滞留時間を5年間とし、その間に琵琶湖に流入するCOD量を求めると
5年間の流入COD量 = 1万7千㌧×5年 = 8万5千㌧
となり、このときの湖水のCOD平均濃度は
湖水の平均COD濃度 = 8万5千㌧÷275億㌧
≒3 mg/L
となります。
偶然にも、最近の湖水COD濃度(平成18年度年平均値;南湖3.1mg/L、 北湖2.5mg/L)に近い数値が得られました。仮に試算結果が正しいとすると、湖水のCODの環境基準値(1mg/L)を達成するには、現流入COD量の約7割を削減する必要があるということになります。
環境分析部:若狭っ子
Posted by
西日本技術の環境調査員
at
07:28
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