2010年06月29日

ふらん瓶の中の地球

<環境とBOD>

水質を評価する上で重要な項目のひとつがBOD(生物化学的酸素要求量)です。
BODとは、水中の汚染物質(有機物)が微生物によって浄化(無機化=消化)されるときに必要になる酸素の量のことで、この数値が大きいと水が汚れていることになります。
日本の大きな川には環境基準が設定されていて、BODも環境基準のひとつの項目です。
また、事業場の排水もBODの排水基準が定められています。

ふらん瓶の中の地球
さて、BODの測定に関して、ちょっと詳しくお話します。
BODの測定では、ふらん瓶という密閉容器に測定する水を入れ、これを20℃で5日間培養します。このとき、最初にふらん瓶に入れる水には酸素が飽和した状態にしておきます。また、ふらん瓶内での消化活動に微生物を植えつけておきます。
5日間の培養中、微生物は汚染物質(有機物)を消化しながら増殖します。すると酸素は微生物によって消費されていき、やがて全ての汚染物質(有機物)又は酸素がなくなったとき微生物による消化は止まります。

また汚染物質(有機物)が消化されていくとき、ふらん瓶内では微生物により二酸化炭素や有機酸ができます。このためBODの測定では、あらかじめpHの変化を抑える薬(緩衝液といいます)を入れて、pHの変化が起こりにくくしてあります。

<ロジスティック曲線>

このときの酸素の消費量を縦軸に、日数を横軸にしてグラフを書くと下の図のようなS字の曲線になります。このような曲線をロジスティック曲線と呼びます。

ふらん瓶の中の地球
地球の容量もBODと同じです
地球環境については、温暖化問題を中心にみなが共通の危機感を持つようになってきました。
しかし地球環境問題の根本は、正常な循環が崩れていることにあります。
BODのロジスティック曲線の話に出てくる言葉を、下記のように置き換えるとどうなるでしょうか。
 
ふらん瓶      → 地球
 微生物       → 人間
 酸素、汚染物質   → 資源、食料
 二酸化炭素、有機酸 → 廃棄物、環境汚染物質

ふらん瓶の中の地球
BODのロジスティック曲線は、人類の人口増加(右図)や経済成長の変化を象徴的に表しているように見えてきます。
ふらん瓶内では生成した二酸化炭素や有機酸の影響を緩衝液で制御していますが、地球環境も同様に、人類の活動によって排出した廃棄物や汚染物質を生態系サービス(多様な生物が織り成す有益性)によって浄化されてきました。
しかし今や人類が排出する汚染物質は生態系サービスの容量を超え、その影響が肝心の多様な生物の消失をもたらしています。
私は、人々のさまざまな活動が地球の容量に調和するようにと願っています。

                          

                                            環境分析部:ジ・アース

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Posted by 西日本技術の環境調査員 at 07:28 │Comments( 0 ) 環境
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