2009年02月19日
黄砂の季節(越境汚染)
黄砂(こうさ)などが原因で発生する霞は春霞と呼ばれ、昔からある現象です。しかし、近年、中国や韓国にもたらす砂嵐の物理的な被害のほかに、黄砂が日本においても健康に与える影響が報告され、「黄砂テロ」とよばれることもあり、越境汚染のひとつとして注目されています。
個人差はあるようですが、黄砂が多い日には、花粉症、喘息、アトピーなどのアレルギー疾患の悪化が報告されています。
<黄砂とは>
気象庁の定義では、「黄砂とは大陸性の土壌粒子によって視程が10km以下になる現象」としています。2月から5月ごろが最盛期で「黄砂に関する気象情報」が出される日があります。気象庁による現在の黄砂情報はこちら
→黄砂情報(実況図)http://www.jma.go.jp/jp/kosa/
<なぜ、黄砂が環境問題か>
黄砂は上空を浮遊しながら次第に大気中のさまざまな粒子を吸着します。その成分は発生する地域と通過する地域により異なるとされていますが、中国・韓国・日本などの工業地帯を通過した黄砂は硫黄酸化物や窒素酸化物を吸着し、浮遊中に紫外線の影響を受け汚染物質に変化する可能性も指摘されています。例えば、オゾンは窒素酸化物が排出されて、風下側に運ばれてくるうちに光化学反応でできる物質です。
また、台湾では黄砂の時期には、大気中のダイオキシン濃度が増加するとされ、韓国では、細菌やカビの濃度、多環芳香族炭化水素(PAH)に属する発ガン性物質が大幅に増加すると報告されています。
日本などに飛来する黄砂は、量自体はそれほど多くないとされていますが、粒子が非常に細かいため、肺の末端にまで到達するとされています。黄砂自体は非常に細かい砂ですからアレルギー物質ではありません。しかし、汚染物質が付着したときに何らかの相乗効果を及ぼし、汚染物質が人体に及ぼす悪影響を増幅させている可能性も考えられています。
<問題解決の難しさ>
黄砂の主な原因とされるのが中国やモンゴルの砂漠化。この対策として、砂漠緑化と農業方法の改良になりますが、現在のところ実効性の乏しいものです。さらに、発生国と被害国の間には、その原因をめぐり激しい対立があります。
技術的な問題として、黄砂そのものの定義、測定機器の整備、観測データの共有化等、基礎的な取組を行うことから始める必要があります。
さらに、SPM(浮遊粒子状物質)、PM2.5(微小粒子状物質)、オゾン等の大気汚染物質だけではなく、日本ではすでに禁止されているDDT等の農薬、PCB、ベンゼン等の化学物質が大気循環や偏西風に乗ってやってきます。越境汚染は実態の解明とともに、汚染対策が求められます。
なお、2004年、DDT、PCB、ダイオキシン等の有害物質の使用を規制した「ストックホルム条約」が発効していますが、規制の方法は各国に委ねられているため、有効な削減対策を見出してはいません。
<参考までに>
参考値ですが、日本の黄砂濃度の最高値は、黄砂以外も含む浮遊粒子状物質(SPM)は2002年に0.79mg/m3(790µg/m3)という値が観測されています。
先日、中国中央テレビ(CCTV)のホテル側が全焼した日、北京の浮遊粒子状物質は爆竹や花火の影響で0.81mg/m3(810µg/m3)を観測。煙突内で呼吸するのに相当する汚染度と北京日報が伝えています。
黄砂の日には、風邪じゃなくてもウィルス用のマスク着用を!
Posted by
西日本技術の環境調査員
at
07:28
│Comments(
0
) │
環境