2009年03月25日
スイッチグラス
トウモロコシや大豆からエタノールを作り出すことは、多くの人が顔をしかめます。理由は食料とエネルギーの争いになり、裕福な自動車所有者VS貧困な食品消費者の構図が出来上がるからです。
そこで雑草のような草を利用して、エタノールを取り出す技術が実用化に向かって進んでいます。
<開発はどの段階?>
セルロース原料(作物の茎葉、林地の残材、草や成長の速い木など)にハイテク酵素を使って植物に含まれるセルロースを単糖に分解し、これをエタノールに加工する方法か、糖を炭化水素分子にして直接ガソリンに変換する方法があります。
これらは実証プラントの段階から大規模プラントでの実用化を目指す段階へと移行しつつあります。
<効率は?>
トウモロコシの農薬や収穫などの生産エネルギー:取り出すエネルギー比率は1.4~1.5倍。トウモロコシが有利ではなく、アメリカの実態はエタノール製造への助成金制度があることによって有利さを保っています。
この点ではブラジルのサトウキビが有利。しかし、森林伐採や収穫前の火を入れは温室効果ガスが大量に排出されます。
そこで、この生産エネルギー:取り出すエネルギーの比率が高いと研究されているのが、バミューダグラス、スイッチグラスやエレファントグラス。雑草を育てるのですから、農薬や肥料はほとんど不要で、この場合の比率は1:5~10倍。
<黄砂対策>
エレファントグラスはアフリカ原産で、あまり資料がそろっていません。ここではアメリカのロッキー山脈東部にも育っている多年草植物のスイッチグラスで考えてみます。最小限の灌漑、肥料、除草剤で育つうえ、単位面積当たりのエタノール収率はトウモロコシの2~3倍。スイッチグラスは土壌侵食対策に用いられる植物ですから、水が少なく「砂塵嵐」(砂嵐)」に悩む中国・モンゴルの砂漠地帯でも生育できる可能性があります。
<セルロース系のバイオ燃料の可能性>
麦わらやイネの茎などは、通常畑や水田に捨て置かれ、最終的には鋤き込まれるか焼却処分されます。また、道路の路肩等に生える雑草も取り出すエネルギー量は別にすれば、技術的には可能です。
問題なのは、どのように回収するかということです。この点だけはトウモロコシが有利。
セルロース系のバイオ燃料では、日本近海の藻も有望。なんと言っても「勝手に生えて多量」。ただし、収穫方法と乾燥プロセスの研究が必要です。
バイオ燃料の話をするとき、忘れてはいけないことが2点あります。
1点目は、石油と一緒ですから、燃やせば二酸化炭素は排出されます。ただ、植物の成長過程で二酸化炭素を吸収するので、トータル排出量をゼロとしているだけです。
2点目は、耕作地よりも森林のほうが多量に二酸化炭素を吸収します。したがって、バイオ燃料がベストということではありません。自然はそのままにが正解です。
この原稿を書いている途中、ネットでいろいろ調べましたが、バイオ燃料について日本人研究者の数がまだ少なく、政府の投資が少ないことが懸念材料。
Posted by
西日本技術の環境調査員
at
07:28
│Comments(
0
) │
環境