2010年09月07日
琵琶湖の守り神
緑豊かで、神の棲む島として古代より信仰の
対象となった竹生島は、長浜市早崎町の湖岸から
約5kmの沖合いに独り浮かぶ、周囲約2km、
標高約200mの小さな島です。
この竹生島を舞台にした、能「竹生島」では醍醐天皇の
延喜時代(西暦900年頃)の春のころに臣下が竹生島に
参詣するために、真野の入江(現、大津市)から釣り船で
船出します。
船中で船頭さんが、この辺りでは朝に夕にたくさんの
魚が獲れ、湖岸の春の花はさながら白雪のように見え,
あるいは景色の面白さに漁業の辛さを忘れる、
さらに山桜は天智天皇の昔(西暦670年頃)に設けられた
花園のように美しいなどと、
琵琶湖の景色の素晴らしさや魚などの湖の恵みの豊かさを謡います。
謡曲本「竹生島」
参詣する竹生島の宝厳寺には水の守り神、学問や芸能の神さまの弁財天さまが祀られ、古くから湖の守り神とされてきましたが、あるとき比叡山から眺めた湖の形状が弁財天さまが演奏する楽器の琵琶に似ていることが見出されたため、16世紀の初めに「琵琶湖」と名付けられたそうです。その弁財天さまに参詣するその頃の人々は、山紫水明の景色や豊かで美味しい飲み物や料理を味わいながら、琵琶湖の船旅を多いに楽しんだことでしょう。
はるかに時代を下った最近の琵琶湖には、富栄養化現象や淡水赤潮やアオコやカビ臭の発生、水草の大量繁茂、難分解性物質の増加、湖底の低酸素化、ブラックバスやブルーギル等の外来魚によるニゴロブナなどの在来魚の激減、さらにはカワウの糞害などがあり、弁財天さまもやきもきされているのではないでしょうか。
弁財天さまに心配をかけず、1,400万人の命を支える琵琶湖を次世代に健全な姿で引き渡すためには、水環境の保全事業に携わる技術者として一層の知恵をしぼり、地道な活動を継続して行かねばならないという思いを、残暑厳しいある夕暮れに新たにした次第です。
環境分析部:若狭っ子
Posted by
西日本技術の環境調査員
at
07:28
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