2011年01月21日
大都会のおいしい水
水道水といえば塩素臭を連想するかたも多いのではないでしょうか。
水道業界の専門紙「水道協会雑誌」の平成22年12月号が「残留塩素の適正管理特集号」でした。
東京都はおいしい水を供給するために国の定めた水質基準より厳しい独自の水質目標を設定しているそうです。
例えば残留塩素では国の基準が0.1mg/L以上1.0mg/L以下であるのに対し、
東京都の目標では0.1mg/L以上0.4mg/L以下
また、国の基準にはない「トリクロラミン」の値が0mg/Lであることになっています。
これで殆どの人がカルキ臭を感じないのだそうです。
他にも横浜市、川崎市、大阪市もそのような目標を定めているということです。
この目標を達成するために必要なことが「残留塩素の適正な管理」というわけですが、
どうすれば適正に管理できるのでしょうか?
ざっと見たかんじで、
1)水道水を高度処理する
2)古い水道管を新しくする
3)貯水槽から直接給水への切り替え
4)貯水槽の大きさをちょうどいいのにする(長時間貯めたままだとまずくなるから)
5)配水ブロックの整備
6)追加塩素設備の整備
といったところで、それなりの費用が必要です。
今どきは大都会の方がおいしい水を飲めるようです。
同じ号に、EU諸国における残留塩素の保持に関してのレポートもあります。
すべての国が法的に消毒を義務づけているのではなく、国によって基準が違っており、
1)水源がいい、
2)浄水処理で大丈夫、
3)配水管の衛生状態がよい、
4)消毒副生成物を防ぎたい、
5)どちらかというと、「仮にわずかな消毒残留効果を保持していても重大な汚染混入には効果がない、残留消毒を汚染混入の指標として用いることは、現実的な信頼性に乏しいとの判断によっている」
など、その地域の特性によって塩素が残留していることを義務づけていない場合があるそうです。
特にオランダでは「塩素消毒及び残留消毒剤保持に依存しない水道システムの構築」をしているので塩素消毒を停止しているということです。
※ただしオゾンやUVによる殺菌処理を行っています。
たしかに日本で良質な地下水を水源としているところまで塩素消毒しているのは、もったいない気もします。
また、同じ号に
「塩素処理したプール水中に存在する発がん物質ニトロソアミン」というアメリカの文献抄録が出ています。
「米国で膀胱がんのリスクが塩素処理水の飲用や水泳によって増加することが疫学調査により示唆されている」とのことです。
水道協会雑誌平成22年3月号「気相曝露量の実態調査に基づいた水道水中トリハロメタンの曝露量と飲用寄与率の評価」という論文にも
「曝露経路に着目した疫学研究において、塩素消毒された水でシャワー・入浴をした群は膀胱ガンのリスクが2倍増加した」との別の論文が引用されています。
しかしガンも恐いのですが、レジオネラ属菌の肺炎やら、カビだらけの加湿器の方がよっぽど恐い、やっぱり「残留塩素を適正に管理」してもらうのがいいような気もする。
ところで昨年末、
「スポーツジムやプール、温泉で主に感染が広がるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が英王室領マン島で見つかった。入院患者に院内感染などを起こす従来のMRSAと異なり、若く健康な人に感染しやすい特徴がある。」
というニュースがありました。
塩素消毒どころではない。おおこわいこわい。
設計秘書
Posted by
西日本技術の環境調査員
at
07:28
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